2025 TOKYO キヌクロ - 9月6日(土) 第6回 クロスカントリーラン in 砧公園 受付終了

クロスカントリーラン in 砧公園 キヌクロを世界陸上開幕1週間前の2025年9月6日(土)に開催します。

聖地・キヌクロへようこそ

東京の地図を広げ、世田谷区に目をやると、東名高速道路と環状八号線が交差する都内屈指の交通の要所があります。絶え間なく車が行き交うその場所は、都会の喧騒の象徴ともいえるでしょう。
しかし、そのすぐ隣に、まるで都市の熱を冷ますように広がる広大な緑地があります。それが砧公園です。戦後は都営ゴルフコースだったという歴史を持ち、なだらかな丘陵地を一面の芝生が覆う――都心では稀有な自然のオアシスです。

週末には多くの家族連れがピクニックシートを広げ、子どもたちの声が響き渡ります。ぱっと見は、のどかな公園の風景。しかし、ここには案内図には載らないもう一つの顔があります。
園内を歩くと、芝生の上に一本の「わだち道」が刻まれているのに気づくでしょう。それは公園整備で作られた道ではありません。日本のトップランナーたちが、来る日も来る日も走り続け、自らの足で刻んだ“生きたクロスカントリーコース”――これがキヌクロです。

この道はランニングコミュニティの間で長く「公然の秘密」でした。公園を管理する東京都公園協会ですら、その存在が日本の長距離界でどれほどの意味を持つのか、当初は知る由もありませんでした。なぜならトップ選手たちが走るのは、人影のない早朝や夕暮れ時。一般利用者の目に触れることがほとんどなく、近隣にも迷惑をかけない時間帯に、ひっそりと驚くようなペースで緑の丘を駆け抜けていたのです。

トップランナーたちが畏敬を込めて呼ぶこの道の名は――「キヌクロ」。公式認定や設備ではなく、積み重ねられた実践と情熱が、普通の芝生を“聖地”へと変えてきました。

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「聖地」は、一人の監督の想いと選手の汗から生まれた

キヌクロの始まりは、一人の情熱的な監督と、その行動力から生まれました。駒澤大学陸上競技部の大八木弘明総監督です。
実業団を経て母校駒澤大学駅伝部の若き指導者として就任した大八木さんは、練習拠点の多摩川河川敷が距離を踏むには最適である一方、平坦すぎるがゆえに箱根路のアップダウンに対応できない“弱さ”を残してしまうのではないか、と気づきます。

課題を克服するために彼が選んだのが、大学からほど近い砧公園周辺の起伏でした。机上の計画で終わらせず、自ら「コロコロ」と呼ばれる距離計を手に歩き回り、選手を鍛えるにふさわしいコースを切り拓いたのです。仮想箱根駅伝ともいえる砧公園の外周やサイクリングコースを使ったアップダウンのあるロードコース。そして目をつけたのが、砧公園内部にある芝生の丘陵地でした。芝生の不整地、柔らかな土、絶え間ないアップダウン――そのすべてが「この負荷に耐えられるか？」という問いをランナーに突きつけます。

これが後に「大八木コロコロ伝説」と呼ばれる所以であり、指導者自らの足と手で練習環境を作り上げた、原初的な情熱の証です。キヌクロを走っていると、たまに教え子の練習を見守る大八木さんの姿を見かけることも。横を通るときは、つい緊張してペースアップしてしまう……そんなランナーも少なくありません。少し大げさかもしれませんが、キヌクロを走ることは、大八木さんの哲学と対話する時間でもあり、その答えを自らの走りで探す行為なのです。


やがてキヌクロは駒澤大学だけの秘密兵器ではなくなります。「砧公園にいいクロカンコースがあるらしい」という噂は瞬く間に広がり、明治大学、國學院大學、日本大学、東京農業大学などの駅伝チーム、花王、旭化成、住友電工、MABPマーベリックといった実業団、さらには新谷仁美選手を擁するTWOLAPSをはじめとしたクラブチームまでがこの地を活用するようになりました。数々の日本記録がここから生まれたことも、キヌクロが“聖地”となった理由のひとつです。

アメリカ・オレゴン州ユージーンが「TrackTown USA」と呼ばれるように、砧公園を中心としたエリアは日本の「TrackTown」。ユージーンに“プリフォンテーン・トレイル”があるように、東京には大八木監督の情熱から生まれた芝生の“キヌクロ”があります。


年に一度、この砧公園のクロカンを貸し切ってレースを行います。
今年もまた、９月６日にキヌクロを開催できることになりました。
あなたの一歩を、この聖地に刻みに来ませんか。